1986年、ローマにマクドナルドの支店が開店。 同社のイタリア進出第一号店でした。日本に遅れること15年、以後飛躍的な勢いでファーストフードのお店がイタリア各地にオープンし、若者を中心としたイタリア人の食環境は、一気に「ファーストフード」化。
「イ タリア各地に根づいてきた郷土料理はどうなるのか?」 「単一的な味に慣れてしまった子供や若者の、味覚・健康はどうなっていくのか?」 「速く食べる習慣が身についてしまうと、家庭料理や家族の団欒はどうなるのか?」 等々、イタリア人の中から「ファーストフード化」する食環境への危機感が生まれました。
そんななか、或る人間が口にしたのが「スローフード」という言葉だったのです。
食環境への危機感、そしてこの「スローフード」という言葉は少しずつ共感の輪を広げ、北部にあるブラという小さな町に「スローフード協会」がやがて設立されました。 同じような危機感が、実はヨーロッパの各国でも感じられていました。
「スローフード運動」は、やがてイタリア国境を越え、ヨーロッパ、さらには全世界へと広がっていきました。
私たちの哲学
あらゆる人には喜びを味わう根本的な権利がある。またそれに伴いその権利を可能とするところの食の遺産、伝統と文化を守る責任がある。我々の運動はこのエコ・ガストロノミー――お皿とこの惑星とには強い結びつきがあるという認識――のもとに成り立っている。
ス ローフードは、美味しくて(Good)、環境に配慮された(Clean)、公正な(Fair)食べ物のことだ。我々が口にする食べ物は美味しくあるべき だ。そして環境や動物の権利保護や私たちの健康に害を与えないクリーンなやり方で生産されるべきだ。さらに生産者は労働に対する公正な報酬を受け取るべき だ。
我々は消費者ではなく「共生産者」であるべきだ。食がどのように生産されるかを知らされ生産する人を活発にサポートしようとするとき、我々は生産の過程の一部、もしくはパートナーとなるからだ。
私たちのミッション
スローフードはイベントやイニシアチブを通じて、私たちの食料供給の多様性を守り、味覚教育を広め、すぐれた食の生産者と共生産者を結びつけるために動いています。
生物多様性の保護
品質の良い食べ物や飲み物を楽しむことは、工業化されたアグリビジネスと慣行食品が優勢になることによって、絶滅の危機にさらされてしまった無数の伝統的な穀物、野菜、 フルーツ、動物種、食品を守る努力と結びつけられていなくてはならないと、スローフードは考えます。
味の箱船とプレシディオ(どちらもスローフード基金によって支えられています)、テッラ・マードレによって、スローフードは私たちのかけがえのない食遺産を守ろうとしています。
食教育
感 覚をトレーニングし呼び覚ますことで、スローフードは人々に食べることの楽しみを再発見させ、食べ物がどこから来るのか、誰がそれを作るのか、どう作られ るのかということを知ることの大切さを理解する手助けをします。味覚ワークショプは専門家によるガイド付きのテイスティングを提供し、コンヴィヴィウムの 活動は、メンバーやメンバーでない人々に対して、地域の食材と生産者を提示します。コンヴィヴィウムによる スクールガーデンのような学校での活動は、最も若い年代の食する人々に、自分たちの食べる、作っている食品に対して実地の経験をさせます。 スローフードは科学と食文化における学際的な大学プログラムを提供するために、食科学大学(UNISG)を創立しました。UNISGはアカデミックで科学 的な分野の革新やリサ ーチと、農民や生産者の伝統知識を結びつけるために、スローフードが打ち出した独自の方法です。
生産者と共生産者を結ぶ
ス ローフードは、ガストロノミー的に秀でた生産物を提示するために、賢明な消費者たちに生産者と出会う機会を提供するために、地域的または国際的なレベルで フェアやイベントを開催します。サローネ・デル・グストやチーズ、スローフィッシュ、味覚の原点へ、テイスト・オブ・スローなどのイベントについての詳し い情報は、イベント・リストをご覧下さい。